ごあいさつ

 今、日本と世界の社会・経済は大きな変化の渦中にあります。このような時ほど、この変化と未来を感性でキャッチし、そして理性で考え抜くということがますます大切になってきています。
 俳句を確立し句聖と讃えられる松尾芭蕉が、お弟子さんに向けて俳句のあり方を説いた「不易流行」という言葉があります。「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」というこの教えは、俳句に限らず広く芸道、そして美容、現代にも通じるものです。変わらないもの/変わってはいけないものごとを知らなければ、基本はできない。流行、これは流行りということだけではなく、今、起きているさまざまなものごとを知らないと、自分自身の新たな独自性を打ち出すことはできない。
 「不易流行」とは、豊かな感性と研ぎ澄まされた理性に基づく創造性です。
 本校・日美の「美容を通じて近代の叡智を築く」という建学の精神と「日美は美容界の適塾たれ」という理念は日美の不易です。60年以上の歴史と伝統をふまえながら、美容と美容教育の革新に努めるのが日美の新たな風です。
 本校では美容教育において、ヘアカット・デザイン、メイク、ネイル、エステに関する美容の基本と最新の技術と知識を習得できるように、また、着付けやファッション、コミュニケーションなどの多彩なプログラムを用意しています。さらに、美容に限らず、文化芸術を重んじ、自然美に親しむ野外研修、身体を動かす運動会、クラシック音楽を鑑賞する公演会など、楽しく充実した学びと体験の機会を設けています。
 ともに、美の実践者として、広く美と美容を学んで参りましょう。

 世界中を大きく揺さぶった新型コロナウイルスの問題は、私たち一人一人があらためて足元を見つめ、本当に大切なものは何かを問い直すきっかけになりました。
 日美でも「学生達のために何ができるのか」と思い悩み、決断を重ねる日々が続きました。その中で、新しい授業方法の構築、コミュニケーション環境づくり、そのための教室設備の刷新など、逆境をバネとした大がかりな挑戦が生まれました。
 表面的には教育環境の一新ですが、その変化の本質は「よりあるべき姿に近づいた」ものだと私たちは感じています。日美の培ってきた教育の根本は何も揺らぐことなく、どんどん深まっています。
 社会全体が不透明感や不安に包まれる中で、以前にも増して多くの若い人たちが美容の価値に気づき、大事な人生の選択の場面で美容を選んでくれたことに、私たちは大きな勇気をもらいました。日美に興味を抱き見に来てくれる高校生たち、顔を輝かせて学校に通ってきてくれる学生たちに深く感謝しています。そして、美容が人間にとってどれほど大切で、不変の価値をもっているか。今そのことについて私は、かつてにも増して強い確信を持っています。
 技術を鍛え、美意識を磨く。1954年の開校以来一筋に積み重ねてきたその経験や知恵のすべてと最先端の設備環境を活かして、私たちは最高の学びを提供します。それは、皆さんの中にある夢や思いという「種」をおおきく育てるための絶好の「土壌」になるでしょう。
 ここで過ごす2年間を経て、皆さんが色とりどりにそれぞれの花を咲かせる日を楽しみにしています。